剱岳と立山(前編)

【7月13日 剱岳と立山(前編)】 


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剱岳:ようやく晴れ間の見えた15日の雄山山頂から、感涙にむせびながら・・・
歓喜にふるえながら・・・広大荘厳な岩の殿堂を30分も眺め尽くしました


1日目の計画
益子4:00発~真岡IC~麻績IC~扇沢8:00着8:30発~室堂9:55着
10:10発~リンドウ池経由雷鳥沢11:00着(昼食)11:40発~
新室堂乗越12:10発~別山乗越(剱御前小舎)13:40着13:50発~
ダイレクトコース~剣山荘15:00着(泊)

2日目の計画
剣山荘4:00発~一服剱4:30発~武蔵のコル~前剱5:10着5:30発
~平蔵の頭~平蔵のコル6:10発~剱岳6:50着(朝食)7:50発~
平蔵のコル8:20発~前剱9:00着9:20発~一服剱9:50発~
剣山荘10:10着(昼食)
11:00発~剱沢キャンプ場11:30発
~剱御前小舎経由別山13:00着(北峰ピストン)13:40発~巻道経由
真砂岳14:40着14:50発~内蔵助山荘14:55着(泊)


1日目の実際の行動
益子4:00発~室堂9:45発~ミドリ池経由雷鳥平10:40着11:10発
~新室堂乗越12:00発~剱御前小舎13:15着13:50発~剱沢小屋
14:40発~剣山荘15:05着(泊) 

2日目の実際の行動
剣山荘4:10発~一服剱4:50発~前剱5:55着(朝食)6:15発~
剱岳8:05着8:20発~剣山荘11:05着(昼食)
12:00発~剱沢小屋
12:40発~ダイレクトコース経由別山14:05発~北峰はガスと残雪で中止
~巻道&真砂岳経由~内蔵助山荘15:05着(泊)




雨巻家族で出かける剱岳と立山は初めてのことだけど、
一体全体剱岳界隈には幾たび足を運んだことになるのだろう?
過去のことにはこだわらない(こだわりたくない)私のことだからハッキリした
回数は定かじゃないけど、
剱岳単体があり、
剱岳+奥大日岳があり、
剱岳+立山というノーマルルートは個人とガイド登山とで数回を数えます。
それらの中で、
一ノ越~東一ノ越~タンボ平~くろべだいらと降った時の襞の深い雄大な景色、
奇想天外な出来事(理由あってヨコバイを登りタテバイを降りました)、
ザレ場や草地の百花繚乱は決して忘れられないものがあります。
それらを雨巻家族に体感してもらいたくて、
剱岳と立山とタンボ平を攀じたり闊歩したり夢見心地で彷徨う計画を立てました。
計画と実際は上の通りです。


前回のビバアルプス第1弾!霞沢岳とクラシックルートは想定外の雨だった。
今回のビバアルプス第2弾!剱岳と立山は予報通りの雨風。
それも怖気づくほどの規模。
のっけから標高2450mの室堂のホテル立山建屋内に避難そして待機です。
渋面・仏頂面・しかめっ面の雁首をフードから出して出発の機をうかがいました。
大雨だけならまだしも横殴りの雨風と20mの視界の中地獄谷を歩くのは、
「命あっての物種」ですからね。

風が少し和らいだのを見計らって
「レッツ・ゴ~!!!」
雷鳥沢方面は残雪が豊富すぎて通行止め。
そのことは元々織り込み済みだったのでリンドウ池経由で雷鳥平に降ります。
山崎カールも雷鳥沢も大量の残雪で白・白・白。
辺り一面も垂れ込めた雲で白・白・白。
吐く息さえも白いんです。
白一色!
想定外の残雪の豊富さ!
そうそうロープウェイから見下ろした御山谷もタンボ平もゼブラ模様だったっけ。

歩く内雨と風も振り出しに戻ってきてしまいました。

泣く泣く雷鳥沢キャンプ場管理棟(兼トイレ)に逃げ込みました。
雨風の元では2時間先の剱御前小舎まで休憩に適した場所がないからです。
「ここで食事を摂らせてください」
「ダメだ!トイレで喰え!」
人を人とも思わないこの言い草。
皆さんはトイレで食事をした経験をお持ちですか?

落差日本一の称名滝の源流域に当る沢を渡って新室堂乗越を目指します。
直角三角形の2辺を行くこの斜面も9割がたは残雪に覆われてます。
そこを透明の雨具+ズックよりは増しな靴を履いた若き女性2人連れ。
4本爪アイゼンすら着けていないので見るに見かねてメンバーに加えました。

一度だけ泊まったことのある剱御前小舎は温かな小舎です。
この先剣山荘までの所要時間は読めるので思いっきりくつろがせて貰いました。
心と身体が温まったところでアイゼンを再装着して
「出発~!」
と思いきや、
ダイレクトコースは残雪が多すぎて通行止め。
予定を変更してアイゼンなしで歩ける剱沢小屋経由で剣山荘に向ったのですが、
広い剱沢雪渓横断中に視界を奪われて3度も立ち往生を強いられました。
仕方なくもあり、情けなくもあり。



【7月14日 剱岳と立山(前編)】


一晩中雨と風との共謀が山荘を叩き続けました。
そのような状況下で私が熟睡できる道理がありません。
「ウツラウツラ・・・イライラ・・・コウスルベキカ・・・?アアスルベキカ・・・?」
それでも3時50分には出発準備完了しました。
予定通りことは進んでいるというのに、
慎重いや弱虫な私は風の咆哮と暗闇が怖くて外に飛び出す踏ん切りがつけられ
ないでいました。
雨なんて屁の河童。
だけど怖いんですよ山での風は。
特に岩場だらけでスリリングな剱岳においては。

20分の逡巡の後自分をも叱咤する
「レッツ・ゴ~!!!」
の掛け声。
11人の家族の眼に畏怖の色が滲んでいても見て見ぬふりで飛び出すと、
そこには漆黒の闇夜に雨風が渦巻く修羅場そのものがありました。
耐えることだけに集中しなければ地獄に墜ちてしまうほどの修羅場は、
私たちの心の片隅から畏怖などというチッポケなものはたちまち奪い去りました。
「余分なことは考えるな。無になって目元手元足元だけに全神経を傾注しろ!」
との思し召しなんでしょう。

一服剱の登りの手前に150mほどの残雪があり
「剱岳別山尾根ルート一番目鎖場」
の標識を隠していました。
承知していたものの残雪の表面は凍てていてカチカチ、ツルツル。
慎重に渡り終えるとその後はいつもながらの険しくも楽しい道が復活しました。    

一服剱(2618m)はまだ薄暗かったけど、
足元の道は明白なので岩場では邪魔になりがちなヘッドランプを外しました。
その時ヘルメット+スリング+カラビナ装着のお兄さんがあらぬ方向に降りて
いくのを目撃しました。
???でしたが残念なことに声が届く距離でも状況でもありませんでした。

その登山道と見まごうガレ場を
「間違い得るよね」
と確認しながら通過し、
武蔵のコルに降り、
三番目・四番目鎖場の助けを借りながらも、
手の切れそうな岩角に頼り狭い岩棚にビビりつつも次々にクリアしていきます。
私にとっては目新しくも何ともないので淡々と書き進めてしまいがちだけど、
風も雨も収まらない状況下にあっての緊張度はマックスだったかも知れません。
周囲50mほどしか見えない状況だけが安寧と言えば安寧。

「前剱の山頂は広いからそこで朝食。気合を入れてもう一踏ん張りしてね~!」

その前剱(2813m)で身体と心をリセットし直して降って行くと、
狭くて小さな鉄製ブリッジに出合います。
僅か3mでも渡っている最中に突風が吹けば一巻の終りなので、
橋を手摺にして一段下の岩棚をトラバースしてもらいました。

前方にボ~ッと前剱の門が現われました。
名前はただの「門」だけど「登竜門」に相応しい面構えと出立ちです。
そしてその門を回り込むと平蔵の頭・平蔵のコルの難所が待ち構えています。
刃を登り降りする設えは大キレットの長谷川ピークを彷彿させるものがあるけど、
頑丈なステンレス製鎖のサポートがあるので無茶さえしなければ安全・安心。

コルでヘルメットのお兄さんが追い越していきました。
「もしかしてザレを降っちゃった?」
「ハイッ・・・」
精神的なショックと肉体的なダメージが少なからずあったようで、
憔悴の表情を隠そうともしなかったけど
「若いんだから決してめげるなよ!」

コルから残雪に沿って登っていくと尾根に出てしまいました。
この尾根は明らかに下り専用ルートです。
ということは10m下の残雪の上か脇に上り専用ルートがある筈。
確かめてもらうと大岩壁と3mの残雪との1m弱の間隙に登山道がありました。
たった2~3分の出来事だけど道迷いは決して他人事で済まされません。

間隙を抜けた部分に「剱岳別山尾根ルート・上り・カニのたてばい・9番目鎖場」
のプレートが光り輝いて注意喚起してました。
こここそが恐れつつも憧れ続けていたであろう剱岳きっての
(通称)難所中の難所、
(通称)名所中の名所。
でもそれぞれの表情には余裕の笑みが見てとれました。
安全のため間隔はおいたものの不安を感じさせる家族は誰一人としておらず、
スイスイと登りきりました。
決して弱くはない雨風を突いてですよ!

どんな場所でも「難しい」と言い続ければ難しくなり、
「易しい」と言い続ければ易しくなってしまうものなんです。
俗称「デイダラボッチ・マジック」
「騙された!」と言われることもままあるにはありますがね(テヘヘ・・・)   


「カニのたてばい」を登りきればそここそが岩の殿堂剱岳(2999m)の天辺です。
いつものように11人に先に登ってもらってから私も天辺に立ちました。
白濁した雲以外に何もありません。
何故か神社さえも見当たりません。
飛ばされてしまったんでしょうか?
でも標識が転がっています。
三角点も認められます。
濡れ鼠の12人は
握手!抱擁!バンザ~イ!握手!抱擁!バンザ~イ!
紅潮した頬を伝い落ちていたのは雨の雫だけではなかったかも・・・ね。
かく言う私もちょっとだけ涙腺がゆるんでいたかな?

私たち以外にいた2人の登頂者からも握手を求められました。
剱岳の山頂には特別な意義が存在するんですよね、キット。
特に今日という日の剱岳は比類なき価値に満ち満ちていたんだよね、確かに。 


たてばいよりも難易度が高いカニのよこばい(10番目鎖場)やステンレス製の
長梯子を慎重に降り、
登りには目に入らなかった花々を堪能し、
無事剣山荘スタッフの祝福を受けることができました。
注文しておいたカレーをお腹に落としたときようやく緊張の糸が解け、
ストレスで傷んだ胃の痛みもス~ッと消えていきました。
「終わりよければ全てよし。良かった~~~!」
感謝!感謝!感謝~~~!

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ロープウェイから見下ろす東一ノ越付近は残雪が豊富でした。ここを降ってくる
予定に黄信号が点りました

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今回も雨です。風も吹いてます。身も心も寒いです。でも年間計画で動いている
限りこればかりは仕方ありません。玉殿湧水を存分に味わってから元気に
出発しましょう

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雪解け跡にはコバイケイソウ

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同上:ハクサンイチゲ

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同上:コケモモ。他にアオノツガザクラ、チングルマ、ミネズオウなど沢山見られた
けど、悪天候下で先頭を担う私に花を写す余裕はありませんでした

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新室堂乗越に向けてレッツ・ゴー!花を楽しみにしていたけどこれでは・・・ね~

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何処も彼処も雪・雪・雪。余りにも粗末な装備の2人を真ん中入れて歩きました

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新室堂乗越を目指して

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剱沢小屋から剣山荘へと剱沢雪渓を横断中

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3連休だというのに悪天候によるドタキャンがあったようで山荘はがら空き。
美味しい料理をいただきユッタリ休めました

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闇夜と風雨を突いて出発

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岩場にて

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風が強くてあおられるのでブリッジの脇を通り抜けました

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道迷いしそうになったカニのたてばい手前の隘路

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カニのたてばいの標識

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カニのたてばいを登る家族たち。最初は必至

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同上。慣れてくると余裕

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同上。途中からは楽しげ

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同上。でもアッという間に終了

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剱岳山頂で歓喜の雄たけび!

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端数の月日を加えればあわせて148才のモリちゃんとイッシー。オメデト~!

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リュウ君へ。約束どおりお母さん頑張って登ったよ!褒めてあげてね

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この記事へのコメント

ハッちゃん
2013年07月18日 09:55
おはようございます。先日、難航した剣の話をちょっと伺って、レポ、楽しみにしていました。
読めば読むほど、見れば見るほど(画像処理も大変な作業ですね。)、悪天候の中の剣岳制覇!気力と体力で成し遂げた剣岳・・・・十分に伝わりました。参加する自信がない私でしたが、山登りのあらゆるリスクに立ち向かい、登りきることこそが、山登りの醍醐味なんですね!そして、雨巻き家族の山行には、必ずデイダラボッチがいるからこそ、家族は安心してついていけるわけで・・・私も気力体力を鍛えて参加できるように頑張ろう~!後編も楽しみにしています。※山頂での写真、ほんと!みんな良い顔してますね。お疲れ様でした。
セとナ
2013年07月18日 10:43
デイダラボッチさん、こんにちは。
早っ!
心配はしていましたが予想を遥かに超える残雪に
びっくりです。
経験がないとこんな悪天候の中登頂出来ませんね。
きっと雨巻家族の皆さんも忘れられない山に
なりますね。
私達も内蔵助山荘から見た滝雲、夕焼け、鹿島槍方面
からの朝日を忘れる事が出来ません。
後編待ってますよ~
首を長くして(笑)
カッチン(かつまさ)
2013年07月18日 10:51
デイダラボッチさん、ご無沙汰です。イヤァ~感動的な前編のブログ、手に汗もので拝見しました。悪天候にもかかわらずアタックして見事達成みんなカッケーッスデイダラボッチさんの言うとおり何事も難しいと言い続ければいつまでも難しいままですよね。なんか勇気をもらいました。39・感謝です。それはそうと「かつまささん」って言いにくいですよね。今度お会いする時は「カッチン」でお願いします。
2013年07月18日 16:34
ハツちゃん、こんにちは。
女弁慶、じゃなかった、女牛若丸のハツちゃん
なら楽勝だったのに惜しいことをしましたね。
あんな試練にはなかなか出あえない。

物事や文章には起承転結という組み立てがあるよ
うだけど、今回は起承転らしきものはなかった。
でも最後に結と言おうかどんでん返しがあった。
後編も見てね。
2013年07月18日 16:41
セとナさん、こんにちは。
ナさんが首長族にスカウトされないで済むよう、
ちょっとだけスピードアップしますね。
アフリカは遠すぎるから責任重大だな~!
2013年07月18日 16:56
カッチン、こんにちは。
他のブログには間髪を容れずコメントしてるのに
デイダラボッチには梨の礫が続いていたから、
何かしら「カッチン!」ときてるんだろうと思い
私もコメントを控えてました。
まっ、普通こんなことも書かないよね。
デイダラボッチはいつまで経っても幾つになって
もデイダラボッチのまま。
後編も見てもらえたなら嬉しいです。
ロイミー♪ちゃん、どうしてるのかな~。
ヤホホ
2013年07月18日 20:02
無事に登頂おめでとうございます(^^) さすが雨巻家族です。状況判断と決断力、やりとげてしまう集中力はスゴいです。
私も、8月始め剣岳(別山尾根)に挑みます。少々不安でしたが、皆さんのパワーを頂いて慎重に行ってきます。
腰痛ですが、ヨガも良いですよ。
和子&徹也
2013年07月18日 20:44
デイダラボッチさん 雨巻家族の皆さんお疲れさまでした。
前篇のレポの迫力に手に汗握り読ませて頂きました。
雨、風と自然の試練が付きまといますね。
トイレで食事しろとは人間の言うことではないですね。
私だったら、手が出ていたかも?
でも、皆さんは凄い。
デイダラボッチさん安全を考えながらの決断、判断も私達には想像も出来ない大変だったでしょうね。
自分だけなら何の迷いもなく行動できても、連れて行った仲間の安全を考えると決断に慎重という文字が胸を叩くでしょうね。
後半も楽しみにしています。
イケちゃん、リュウくん
2013年07月18日 22:16
デイダラボッチさんこんばんわ

昨年から山を始めいつかは
北アルプスに行きたいと思い続け9カ月半でついに劔に今年の春まで筑波山、宝篋山しか登ったことしかなったのに、ついにやった自分ではじめて登りたいと思った山を登りきっんだぁ~みんなサンキュー

お母さんやったね!(頭なでなで)頑張って約束はたしたね
デイダラボッチさんありがとうございます(^o^)リュウ
くに
2013年07月18日 22:57
みなさんタフですね。
レポを読んでいて、息が詰まる思いでした。
よい天気のなか登ってもきっと大変なんでしょうね、剱岳。
それを風雨の中なんて、経験豊かなリーダーがいればこそ
ですね。
後編も楽しみにしてま~す!
2013年07月19日 01:28
ヤホホさん、こんばんは。
って言うかもう「おはようございます」ですね。
技術なんて関係ありません。天気さえ良ければ
1に注意、2にも注意で登れる山です。
どうぞ天気に恵まれますよう!
2013年07月19日 01:41
和子&徹也さん、おはようございます。
20日早朝にまた不帰キレットに出かけてしまう
ので、今頃までブログ作ってました。
マダニと熱中症の被害は大丈夫ですか?
私の方は雨風、腰痛、不眠症に虐げられながらも
前向きに楽しく登れています。
私の体が空く秋ごろにどこかご一緒ください。
2013年07月19日 01:47
イケちゃん・リュウくん、おはようございます。
山を登りきるのは自分の力。
だけどお互い感謝の気持だけは持ち続けようね。
頑張ったイケちゃんに拍手!
お母さんを励ましてくれたリュウくんにも拍手!
2013年07月19日 01:58
くにさん、おはようございます。
「何としても登らせてあげたい」
その思いが強すぎてちょっと無茶しました。
ツアーだったら絶対にあんなリスクは背負わない
ですもんね。でも最終的には個々の力です。
無事に、そして結果的には楽しく登れて
ヨカッタ~!

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